original

SOLD OUT
岸を見ていた I had seen the shore
福山えみ (Emi Fukuyama)
出版社:私家版
刊行年:2016年
サイズ:24.2×18.2cm
ページ:44pp 写真図版数23点
言語:日本語、英語
状態:限定300部、ed235/300 ハードカバー
title:I had seen the shore by Emi Fukuyama
publisher:Self-Publishing
publication Date:2016
size:24.2×18.2cm
pages:44pp 23 color photo
language:Japanese, English
condition:Self-Publishing,2016.Limited Edition of 300 copies with number,235/1000.Hardcover.
私の1番の宝物である、Josef Sudekの1956年に刊行された写真集を見たいのですがとお店に来て下さった福山えみさん。
福山えみさんもプラハにある現在はギャラリーになっているJosef Sudekのアトリエを訪ねたことがあるそうで、Josef Sudekの話しで盛り上がりました。
ゆっくりゆっくり写真集をご覧になる福山さんの話しを伺うと私も写真集を作っていて・・・と、その写真集を手にした時、私は涙が出ました。
表紙の触り心地は、先ほど福山さんがご覧になっていた1956年に刊行されたJosef Sudekの写真集のマットで触るとしっとりしている印刷そのものでした。
本書を開いて、福山さんの作品を見ると大好きなスデックの息吹が確実にそこにはあり、彼女がどれだけスデックを見て来たのかがとても伝わりました。
でも、彼女の写真集はスデックっぽいねで終わる写真では無く、見えている風景と自分との境目に目に見えぬ壁があるようで、あちら側の世界とこちら側の世界では温度差がおるように思えるのです。
初めてみた景色のワクワク感、新しい生活がはじまる時のような不安、ただただ何故だか心が奪われて佇んでいるような感覚。そして、哀愁。
黒と白のコントラストから、すこしぼやけたグラデーションから、作品1枚1枚に物語の始まりを思わせます。
私は嬉しかったのです。Josef Sudekに伝えたいと思いました。
あなたに影響されて遠い遠い日本でも写真を撮っている人が2018年にもいるのだよと。
こうやってまた1つ写真のつながりを彼女のおかげで垣間見ることが出来ました。
この先、福山さんがどのような作品を作り上げていくのか、私はこの目で最後まで見ていたい。そう思っています。
***
私と向こう岸の間には、大きな小さなたくさんの水のうねり。
流れは速くないが、とどまることなくうねり続け、なかなか渡れそうもない。
私の立っているところは、やはりこちら側の岸なのだろうか。
いや、水上の流れに身を任せて漂っている小舟かもしれない。
ゆらゆらと不安定なその足元になんとかこらえて立ちながら、
うねりの向こう側にある岸を見ていた。
ただ静かにそこにある岸。
そんな一年だった。
Between the other shore and me―many swells, large and small.
They were not flowing quickly, but they continued without end; it did not look easy to cross.
The place where I stand―is that, after all, the shore of this side?
Or―perhaps it is a small boat that floats along, having given itself up to the flow of the water.
While managing to stand on my swaying, unstable feet,
I saw a shore on the other side of the swells.
The shore was there, completely still.
It was that sort of year.
(text by 福山えみ)